完全版はやや冗長なのでこのオリジナル版が好きである。
とにかく夏の海の魅力が充満している。ゆったりとしたファンタジックなドラマで、ヒーリング・ミュージックのような味わいがある。
ブルーレイとしての画質は、精細感はそれほど高くないがノイズっぽさもなく不満はない。内容とよくマッチした印象。
地味なストーリーなのでつまらなく感じる人もいるだろう。またイルカを愛する気持ちが強くでていることと、日本人ダイバーを小ばかに
しているようなシーンがあるので反日的と思う向きもあるかもしれないが、個人的に抵抗はない。
主人公のジャック・マイヨールは浮世離れしたキャラクターで人魚のような風情なのだが、かぐや姫を連想させる面もある。あるイルカに
出会ってからより別の存在になっていく感じなので、そのイルカがまるで竹取物語の天人の役割のようだ。ジャックが向かう先は空では
なく海だが、宇宙も深海も未知・魅惑・畏怖などを感じさせる点で似ているので、やっぱりかぐや姫みたいである。
私はそんなふうに好き勝手に解釈して楽しんでいるのだが、もともと理屈なんかいらない作品かもしれない。イルカだか人間だか人魚
だかわからない気分になって、波に漂う感覚でみたい、というより感じたい――そんな映画である。