自分の気に入った物を他人に薦める行為ってのはある意味少しお節介であろう。
そんなの自分が納得できていて楽しければそれで良いはずである。
しかし作者は自分の気に入った物の楽しさを他人に教えたくてうずうずしちゃうんだと思う。
この楽しさを解ってくれよと、面白いんだからさと、一緒に楽しもうよと。
作者の近頃のお気に入りが自転車であり、その経緯で競輪の世界に招かれ、思っても見なかった
その個性的で男臭く、昭和の匂いの残った、ちょっと世間からはずれた場所の紹介が本書である。
作中の選手はすべて架空の名前を持つが、競輪を詳しい人ならあの選手がモデルだろうなと思い至る
場面も多々ある。しかしそこに縛り付けられることなく、選手達は人生を真剣に生き、競輪に
全てを捧げ、夫婦愛、師弟愛、家族愛、等々に絡み絡まれながら小説の中を躍動する。
私レビュアーは高校生時代SF小僧で、ひょんな事でカレルチャペックの園芸家の12ヶ月を読み、
今に至るも園芸を趣味にしてたりする。ダーティーペアヲタがひょんな事で競輪好きになったり
する気持ちもわかろうって物である。
お節介が世間を廻す事ってのもあるのかもしれない。