あの"Pieces of you"で弾き語っていたシンガーが,という先入観を除けば,あちらの歌姫達にありがちな,カントリーにちょっとロックのフックを効かせた,非常に聴きやすい作品といえるでしょう.彼女の歌声も綺麗に録音されているし,楽器音とのバランスもそのヴォーカルの魅力を殺していなくて,素晴らしいと思う.Shania Twainあたりが好きな人にはストライクでしょう.
ただ,彼女のようなタイプのシンガーには,アーティストとしての「物語」(デビュー以来の活動のストーリー.ups and downsってやつ)を求めてしまうのはたしか."Pieces of you"のインパクトは,少なくとも私には強かった.綺麗な声で毒を吐きまくっていたあの娘が,こうなってしまうのか,という思いは禁じ得ない.その意味では,"0304"という作品で「毒抜き」は完了しているといえるだろうが,ライナーやレビューに書かれていることは,全てリスナーへの言い訳のように読めてしまう.たしかに詞は彼女らしいといえばそうだが,それがメロディの上にのってリスナーの耳に届くわけで,それらをあわせたうえで,(これまでの)彼女らしい,という見方にはとても賛成できない.
とある古CD屋で,本作が100円で売られていたんで買ってしまった.そのくらいの値段でなければ,正直買わなかった.タイトルは,迷走しているという彼女の作品達に対する傍目からの評価を,彼女自身が承知していることを意味している.彼女が本当に「不思議の国のアリス」と決別できるのか,できたとしてもそれがどの程度かの地のリスナーに受け入れられるのか,そろそろ新作も出るようだし,生温かく見守っていきたいと思う.