今から150年前にアメリカ南部の農園の屋敷で奴隷として働いていた12歳の少女が1年間に渡り、隠れてつけていた日記が、本作、『クロティの秘密の日記』だ。(注:クロティは実在の人物ではないが、当時の社会の様子が様々な歴史書や資料を参考に刻銘に描かれている)なぜ秘密だったのかというと、だんなさまから奴隷のくせに文字をおぼえたら、ムチでぶって、南部のはての奴隷商人に売り飛ばす、と脅されているからだ。
途中、だんなさまの息子、ウィリアムぼっちゃまが馬を乗り回し、落馬、大怪我を負う事故が起きる。だんな様は、ぼっちゃまに言われ仕方なく馬に鞍をつけた奴隷のヘブおじちゃんに全ての責任をなすりつけ、おじちゃんを銃で殴り殺してしまう。そのことがきっかけで、クロティは奴隷制への強い憤りを感じるようになっていく。
そんなある日、ワシントンから住み込みの家庭教師、ハームズ先生がやって来た。勉強中、クロティはぼっちゃまをうちわであおぎながら、先生の話に夢中になって耳を傾けた。先生は秘密めいた人だとクロティは思っていた。クロティが先生の話を聞いていることや、日記をつけているのに気づいても、何もとがめてこないし……。やがてクロティは先生が奴隷廃止論者であること、また奴隷の逃亡を手引きする組織に加わっていることを知るようになり――。
今では考えられないような暮らしを送っているクロティだが、日記形式でその心情が生き生きと描かれているのもあってか、現代の子ども達も無理なく感情移入できるだろう。
最初の方はたどたどしかったクロティの文章が、次第になめらかになっていく様子が読み取れるのも楽しい。
自由の意味、夢、差別の問題、学ぶことの意味などが描かれた、ドラマチックで力強い作品。巻末の奴隷制についての説明、資料も大変興味深い。