この六巻で東の兄ちゃん登場。そのあまりにも明るいキャラ設定と、東の練習をのぞきに来たときにボールを握った瞬間見せた表情のギャップからして「きっと何かが、何かが隠されているぅっ!!」とあだち充ファンは思わずに入れないのではあるが、この巻ではおあずけ。
この六巻では、死んだ若葉を未だに「ワカちゃん」と慕って止まない青葉の人物像が明らかになってくる。あだちマンガに限らず、同性である姉をここまで慕う少女像はあまり見ない。
死んだはずの若葉は、心残りという形で光たちの中で生きている。突然の死なんだから、しかたないのだけれど、心残りはどうしても生まれる。しかしその心残りがあるから、今の光は野球をしているともいえるのだ。
青葉にとっては心残りは、最後まで若葉を光から奪い返せなかったことだろう。若葉は死ぬまで、光を好きでいた。全く同じ日に生まれたという、あまりにも出来すぎた運命で10歳あまりにして2人は完璧なカップルだった。その2人の間に、青葉が割ってはいる余地はなかったのだ。それだけに、青葉は光にお姉ちゃんをとられたという気持ち強い。彼女にとって光とは許せない男である。
しかしそれと同時に光は、若葉が認めたただ一人の男でもある。
青葉にとって若葉は、男勝りにしか振舞えない自分からすれば、小学五年生の時点で女としても完璧であった(ちなみにモテの文脈で言えば青葉自身も相当モテているのではあるが)。だから、とっくの昔に年齢では追い抜かしてしまったのだが、青葉の心の中で若葉は今でも、「何でもこなせる頼れるお姉ちゃん」のままで存在する。それは、母を早くに亡くした彼女であれば、なお更だろう。そんな姉の若葉が、死ぬときまでその才能を信じて疑わなかった相手、それこそが光だったのである。
許せない相手ではあるけれども、あの若葉の唯一認めた男、それが光なのである。青葉にとって光はアンビバレントな感情を持たざる得ない男となる。
光を認めたくないという自分の感情が若葉の評価に追いつくとき、はたして青葉は若葉のように光を好きになるのだろうか?