登録情報
|
また、この作品では、冒頭で犯罪行為が行われた後、時をさかのぼって、犯人が犯行を決意するに至るまでの段階から丹念に一つ一つの事実を掘り起こして描いており、この部分をどうとらえるかによっても、この作品の評価は全く異なるものになるだろう。クロフツは、細部まで木目細かく、克明な叙述をすることを得意とする作家であり、その裏返しとして、必ずしも刻一刻とサスペンスが盛り上がっていくという筆致ではないだけに、冗長ないしは退屈と、否定的にとらえる人もいるに違いないと思うのだ。
しかし、そうした筆致で、クロフツが、微に入り、細にわたって、綿密に考え抜いて描いた犯罪行為の過程は、読者に水も漏らさぬ完璧とも思える完全犯罪の成立を強く印象付けるものとなっており、後に明かされる犯人探しとは別の意味合いでの緻密で鮮やかな謎解きの伏線として、必要不可欠なものであったと気付かされるのだ。法廷場面は、法廷小説として見てもなかなか良く書けており、この作品には、単なる「倒叙推理小説」という趣向の目新しさにとどまらない面白さがある。
克明な叙述をするクロフツの特性がマイナスに作用し、長さを感じてしまうところがあるクロフツのもう一つの代表作「樽」よりは、作品の出来としては、この作品の方が上ではないだろうか。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|