非常に面白く,非常に分かりやすいのだけど,読むのにけっこう骨が折れる.骨が折れる理由は分厚いからではない.平凡な教科書においては読者が理解度が不十分なままに読み進めてしまうであろう部分が,本書では読者を突き放すこともごまかすこともなしに,読者に考えさせるように書かれているからである.このような理由から,本書は,「下手な授業で勉強するより本書で独習する方がマシ」というものではなく,「授業がよっぽど素晴らしいわけじゃないなら本書で独習する方がよい」という水準のものだと言える思う.
何よりも際立っているのは,言葉の定義をものすごく念入りに丁寧に行っていることであり,そのために,普通のマクロ経済学の教科書と比べて厳密さが格段に上のものに仕上がっていると思う.定義を蔑ろにして数式展開をしている教科書とは決定的に違う.レビューの最後に,このことを表す文章を二つ引用しておこう.
・「何よりも必要なのは,意味に言葉を選ばせることだ.その逆ではない.」(はしがきより)
・「これで,本当のマクロ経済学の学習に進むことができる」(p.211より)