この本は、本の内容と併せて、この本ができた背景を知ることで、一層この本の深みが増すように思う。
著者ディケンズが、作家としてスランプに陥っていたその当時は、イギリス産業革命下、資産家と労働者の格差が著しく広がり、労働者は貧しく、また過酷な労働を強いられていた時代。
ある日、ディケンズがいつものようにスランプから脱しようと、夜道を思索にふけりながら歩いていた所、深夜までの労働を終えた少年が帰路に駆けていくのをみる。
そのとき、貧しかったころの自分の少年時代が鮮明によみがえり、自分が何を書くべきかに目覚める。
ディケンズは書き始めた。そうしてできあがった作品がこの「クリスマスキャロル」である。
物語中の資産家である、スクルージは、精霊と出会い自分の過去を顧み、また自分がこれから向かえる惨めな死を目の当たりにする。
この体験を通しスクルージは、自分の追い求めたモノ(金)が、どれだけ空しいことだったかに気付き、改心し人々に貢献する喜びを知る。
物語自体は平凡なものかもしれない。だが、当時の労働者階級の人々にとっては、自分たちの生活と、物語中にでてくるボブ・クラチット家族の「家族の温かさ」とを照らし合わせ、この本がどれだけ苦しい生活の中での一筋の光(希望)となったか計り知れない。
この本は爆発的大ヒットとなった。
ディケンズは、人々に生きていく希望を与えたのである。
そして、社会を変えたのである(また、功利主義者の行く末も予言していたのかもしれない・・・)
仕事に成功した人が、家庭では失敗している話は良く聞くが、人生の幸せとは何なのかあらためて考えさせられた。
「仕事と家庭とのバランス。そして社会への貢献」
死んだときに、弔辞で何と言われたいか。
深いテーマを投げかけてくれた、そんな一冊でした。