クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭フロリダ教授はトロント大学の都市経済学の研究者です。これまでの都市経済学というのは交通渋滞がどうのとか街並みを欧米並みにきれいにとか、税金か公営住宅のどちっがよいかなどという話が多くて、それはそれで大事ではあるけれどマクロ的で長い時間すぎて、今一つ自分のこと、あるいは一企業の問題として捉えることができませんでした。
この本は、クリエイティビティを核に都市経済と個人の関係までうまくまとめていると思いました。そして結果的に都市経済学の新しい存在意義を高めたと思います。仕事の仕方や組織のあり方など個人的で現実的な話として、近い将来をどう考えるか、とても参考になります。私が普段感じていたことをまとめて整理してもらってうれしく思いました。大都市の集中と地方の生き残り、教育の内容や個人間の格差の問題なんかはこうした切り口がどうしても必要になってくるでしょう。ただし、クリエイティブとは言っても医師や法律家のような高度な専門家も含んでいるのはちょっと無理に思える点がある。むしろ日本では製造業内の創造性も含めないと一足飛びには変わらないと思う。それから私達に変化の実感が少ないのは居住モビリティや言語、外国人就労の問題もあって日本は既に遅れを取っていることにも注意したい。
情報社会(梅棹)、脱工業化社会(ベル)、ネクスト・ソサイティ(ドラッカー)、第三の波(トフラー)など70年代に盛り上がった未来社会論がありましたが、やっと現実のものになってきたと感じています。
訳者の井口先生は青山学院でクリエイティブ社会を研究している方で訳も読みやすいと思います。井口先生自体は青山らしくちょっとアーチスチックに偏っている気がします。まあそれは関係ないのですが・・・。それから同じ著者の「クリエイティブ・クラスの世紀」のほうは本書より落ちるので、忙しい方は読む必要はないと思う。