1986年の「Display」ツアーにおける、NHKホールでの実況録音盤です。
演奏者は以下のとおり(敬称略)。
中西康晴…pf,Hammond Organ,Rhodes
高水健司…b
井上陽水…g,vo
村上秀一…ds,per
大村憲司…g(素晴らしい編曲もすべて担当)
浜口茂外也…per,fl
小林武史…synth(Prophet-5,DX7x2)
これだけ見ても、悪かろうはずがないじゃありませんか。
実際、村上氏もパッと聴きでは目立つプレイがないにもかかわらず、自叙伝の中で
「生涯でも三本の指に入る」と仰っているくらいですから。五本ではなく、三本ですよ。
正直、選曲は少々地味ではあります。それに、せっかくのコンサートの半分くらいしか
収録されていません。それでも、このライヴアルバムの価値が下がることはないでしょう。
70年代初頭から邦楽界を引っ張ってきた手練れの男たちによる前ノリ気味の演奏に、
一人反抗するように、時に寄り添うように妖しいシンセを響かせる小林氏のプレイヤー気質。
もはや二度と聴けないのではないかとさえ思えるほどです。カッコよさを超えて、ただただ
美しく、もう邦楽のライヴアルバムの中でも屈指の名盤と言ってしまいましょう。
何を見て、何を聴いて「美しい」と思うかは人それぞれだと思うので、あえてこんな表現に
しました。…というか、色々考えてもこんな表現しか思い浮かばないのがもどかしいところです。
くどいようですが、全曲素晴らしいとしか言いようがありません。特にラストの「結詞」は、
私自身墓場まで持ち込みたい一曲です。ええ、私の場合、スタジオテイクではなく、
奏者たちが一つに収斂していくような、このライヴテイクでなければダメです。
なお1986年当時、同時発売されたビデオソフトには当日のコンサートがほぼ全曲収録されて
います。これがなぜDVD化されないのか、邦楽界の七不思議の一つです(2009年6月現在)。