その声に従って水車場の見習となったクラバートは、昼は水車場の職人として働き、金曜の夜には12羽目のカラスとなって、親方から魔法を習うことになる。
『大どろぼうホッツェンプロッツ』や『小さい魔女』などで知られるオトフリート・プロイスラーが、ドイツとポーランドにまたがるラウジッツ地方の古い伝説を下敷きにして書いた『クラバート』。チェコのアニメ作家カレル・ゼマンによって映画化もされたこの物語は、ドイツ児童文学賞、ヨーロッパ児童文学賞などを受賞し、プロイスラー文学の頂点ともいわれる1冊である。
クラバートが足を踏み入れた水車場は、暗く多くの秘密を抱えた場所だ。新月の夜に現われる大親分の存在や復活祭の決まりごと。毎年の大晦日には仲間のひとりが犠牲となるなど、常に死の影がつきまとう。そこでの3年間の修行を経たクラバートは、「自分自身の意志の力と、ひとりの誠実な友の助力と、ひとりの娘の最後の犠牲をも覚悟した愛とによって」親方との対決を果たすことになるのだ。
宮崎駿が『千と千尋の神隠し』の下地としたという本書は、少年少女向きの軽いファンタジーではない。あらゆる世代を対象にした児童文学の枠を超える1冊である。(小山由絵)
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36 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
心に残る名作,
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レビュー対象商品: クラバート (単行本)
表向きは水車小屋の見習い職人、実際は水車小屋を営む魔法使いの弟子になるという秘密めいた設定のため、魔法を覚えていくファンタジックなストーリーに"死"の禍禍しさと緊迫感が終始つきまといます。一見便利で何不自由の無い暮らしは命と引き換えの極限とも言えるものでもあったのです。主人公は友情や愛を見い出すことにより、自分にとって本当に必要なものが何であるのか見極めて、決断を下せる強さを手に入れるのです。 この本を手にしたのは15年以上も前になりますが、今でも時々読み返したくなる貴重な作品です。
22 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
プロイスラーの名作,
By rennjiro (東京) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: クラバート (単行本)
「大泥棒ホッツェンプロッツ」や「小さいお化け」などどちらかというとほのぼの、わくわくするようなイメージのプロイスラー作品。しかし、「クラバート」は少しばかり趣向を異にしています。もちろんホッツェンプロッツなども児童文学の珠玉の名作ですが、「クラバート」もプロイスラーの1つの頂点を示していると言えるでしょう。あらすじを追うと”身寄りのない少年が魔法の学校に入って…”とまるで『ハリー・ポッターシリーズみたいな感じ?』と思われる方もいるかもしれませんが、舞台はドイツの鬱蒼とした沼地。この設定が最大限に生かされており、物語のテイストは180度違います。 ”魔法”という力を手にすることはどのような意味を持つのか、その対価として失われて行くものはなんなのか。この物語では、魔法はただ夢にあふれた素敵な力として描かれてはいません。人の弱さを象徴するものであり、また、因果によって人を縛るものでもあります。クラバートをはじめ、魔法に関わった(しまった)人々の宿命から目が離せません。 巻末の解説によればもともとこの話はドイツ・ラウディッツ地方の伝説として伝わっていたものだったとか。プロイスラーは少年のころこの話を読み強烈な印象を受けたそうですが、もとの伝説とプロイスラー版「クラバート」ではストーリー(とくにラストにかけて)が違います。そのあたりはどうしてなのかを考えるのも面白いかも?
15 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
死の空気を吹き払う、雪解け川の響きにも似た「自由」の響き,
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レビュー対象商品: クラバート (単行本)
チェコ、ドイツ、ポーランドの国境沿いにあるラウジッツ地方。本書は、ボヘミア地方の北に位置するラウジッツ地方の伝説を下敷きにして、作者が描き上げた「魔法使いの弟子」クラバートの物語です。今回再読して、とりわけ心に残ったのは、クラバートが魔法使いの親方の弟子になって三年目、それまでの閉ざされたものから開かれたものへと物語の空気が変わる、その鮮やかさでした。黒々とした闇の中に、一条の光がすっと差し込んだかと思うと、劇的に変化していく物語の色合い。雪解けとともに、長い冬がついに終わり、みるみる春の彩りを増していくような物語の風合い。初めはかすかだった雪解けの川の流れが、「三年目」の章に至って、ぐんぐんと力強く、終盤へと駆け下っていくところ。そこに、とても感銘を受けました。 ご存知の方も多いでしょうが、この「クラバート」の物語、宮崎駿監督の映画「千と千尋の神隠し」の印象的なエピソードとしても使われているんですよね。映画を見た方なら、きっと、「ああ、この場面がそうなんだね」と気づくことでしょう。 原題は、KRABAT 1971年の作品。 著者の作品では、『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズ、『小さい魔女』などを、子供の頃、とても面白く読みましたけれど、一番感銘を受けた作品といえば、大人になってから読んだこの『クラバート』です。今回再読して、あらためて、物語の魔法の力に打たれました。中村浩三氏の訳文も、こなれていて読みやすいものでした。
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5つ星のうち 5.0
出会ってから20年。折にふれては読み返す傑作です。
初めて読んだのは中学の時。読んだ後、3日くらい放心状態でした。... 続きを読む
投稿日: 13か月前 投稿者: ジャムネズミ
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