「バイブル」とは大げさなタイトルですが、クラウドコンピューティング
に関する非技術解説書としては良書と言えます。中島氏も、はじめに
で、本書の意図を明確に「ビジネス書です」とおしゃっています。
日々進化し、膨大な情報量が加速度的に広がっているクラウド
コンピューティングの世界ですが、本書は、専門解説をうまく避けて
上手に過不足なく、先端シーンを整理している点で、その苦労がしのばれます。
同時に、複数人で共著としていますが、分担したことはまったく気がつかない
ほど文章に一体感があって、気配りがうかがえます。
本書が類書と比べて特徴的なのは、以下の点です。
1、IT環境激変における日本が先進性を得られていない課題を提起
2、国際競争力の観点からクラウド牽引企業が、日本以外にセンターを
構築し、いわゆる「ジャパン・パッシング」がここでも現れていることの懸念
3、特に、パブリックとプライベートクラウドに潜む利用時の危険性と課題、
問題点を類書に比較して結構声高に警告。
特に、日本的潔癖主義に起因する「完全性」「情報安全性」「可用性」などの
高い要求仕様と情報漏えい、セキュリティに関してはくどいくらい警鐘し
ています。
いづれにしても、「縦書き」という体裁からして、技術解説ではなく、
「ビジネス書」「つれづれ草」的な「文系向け」なイメージをもちつつ、
日本にとって、日本人にとっての重要な関連性を示唆してなのか、そんな雰囲気
を醸し出しています。
ですが、親しみやすい体裁、構成ながらも、
クラウドコンピューティングがもたらす社会のステイクホルダー(ユーザ、提供
ベンダー、政府官公庁、自治体、事業会社など)への巨大なインパクトを
わかりやすく説明した本としては、大変よい啓蒙書です。
なお、読者にとっつやすさをアピールするためか、挿絵が結構あるのですが
ここは、図解や写真を入れたほうが(予算の都合あるのでしょうが)文章ば
かりのページが続くよりは、読みやすかったような気がします。
ちょっと誤字脱字があったのは残念です。