社会の変化に法律がついていけないのは世の常ではあるが、クラウドコンピューティングと法との関係はその典型と言えよう。
とにかくクラウドについてはその性質上、関係者が多い(システム提供者、サービス事業者、ユーザ、国家等)し、関係する権利や法的関係が多岐にわたる(著作権、個人情報保護法、不法行為、契約、国際司法管轄等)ので、まさにクラウド状態にある。
昨年(2011年)あたりから、クラウドコンピューティングもぼちぼち実需が出始めたところであり、それに伴いサービル提供側であろうとユーザ側であろうと、企業では法務部門へのリーガルリスクのアセスメントの要求(法律相談)が増えてきている。そこで本書の登場である。
冒頭述べたようにクラウドコンピューティングをめぐる法的問題は結論が出ていないものが多いが、本書は想定しうる問題を抽出し、それに対してどういう考え方をしていくべきかを示してくれる。その意味では、本書は答えを直接教える(そもそもこの分野では判例なども乏しい)というより、リーガルマインドとはどういうものかを示してくれる好著である。複雑な問題は”ここから先はややこしいので立ち入らない”という割り切りも好ましい。
250ページ弱で一応すべての法的課題をカバーしている様に思われ、金と時間の投資効果は大きい。ビジネスサイドから相談を受けた法務部員が、”サービス事業者に契約上の責任を追求することは難しいでしょうね。でも不法行為にもとづく損害賠償請求はありうるのではないでしょうか”とか”知的財産の紛争をどの国の法律で裁くかは難しい問題ですが、新しい民事訴訟法では、...”などと答えると、彼/彼女の社内での株が上がること間違いなし!