原作を読み、NHK製作版も見ているので、期待半分、変にぶち壊されていないか不安半分で見ました。どうしても比較してみてしまいがちですが、ひとつの映画としてみればある意味、よくできた作品だったと思います。
俳優陣の役になりきった迫力の演技のぶつかり合いと、編集局内の臨場感あふれる演出、カメラワークにはすばらしいものがあり、まるで実際の事故当時の新聞社内の記録映像を見ている様です。
NHK版ではあまり描かれなかった、山岳シーンも見ごたえがありました。
しかし、です。みどころはそこまでです。やはり原作がある以上、物語の骨の部分が感じられなかったので、監督ご自身が言われている様に「何が言いたいのかわからない」などと言う批評が出るのもわかる気がします。
悠木は家族と別居はしていないし、淳には妹もいたはずです。燐太郎が衝立で悠木に告白する場面は淳が「親父のために」と打ち込んだハーケンの話とともにひとつの感動のシーンでした。
安西が言った「下りるために登るんさ」という謎めいた言葉が軽く扱われていること。また、この事件で記者として凄惨な現場を体験した若き神沢ですが、やがて北関をとび出し共同通信のトップの記者に成長していくはずがなぜかここでは死んでしまう。悠木が出世コースをはずれ一人遊軍記者になっている原因でもある新人記者の望月のエピソードを入れなかった代わりかとも思いましたが、そのわりには何の責任も感じていない悠木。等等。
家族のなかで孤立し会社組織でも居場所を失いかけた男が、御巣鷹山と谷川岳という二つの壁に立ち向かいながらやがて家族や仲間との絆を取り戻していく話と感じていたのですが、新聞社外の人間関係の描写が少なくそこのところが今ひとつ感じられなかったのが残念です。
原作を忠実になぞるのではなく製作者色をだすのは解りますし、それが相乗効果を持って引き立てば大いに賛成しますが、肝心なところが変わってしまうのならば、最初からオリジナルなものを製作するべきではないでしょうか。息子とのすれ違いがほとんど描かれていないこの展開において、時間と予算を費やしたであろうこのラストはあまりに唐突でした。