こうした際物的なピースの演奏においてパールマンの柔軟な姿勢がこれほど好ましい印象を残した例も少ない。彼の演奏表現には聴衆に対する良い意味での媚がある。それは時として官能的でもあるし、忘れ去られた過去への追憶を蘇らせることもある。また彼には聴く者の心を積極的に捉えようとする庶民的な気さくさがある。そしてその為にはあらゆるテクニックを駆使するが、決して度を過ごした品のない表現に陥らないのは彼の秀でた音楽性の賜物だろう。
自己の芸術的な理想は高邁なものであっても時には聴衆と一緒に歩んで行く、そんな彼の優しさがここに収められた19曲に集約されている。それぞれの曲に思いが込められ個性が与えられて理屈抜きに楽しませてくれるアルバムだ。ソロをサポートするサミュエル・サンダースのピアノも音楽的センスの光る名伴奏で、まさに珠玉の小品集の名に相応しい仕上がりになっている。1975年から78年にかけての録音が今回新たにリマスタリングされ音質もきわめて良好だ。