クマムシはその仲間だけでひとつの動物門をなす無脊椎動物である。確かに著者の言うように見た目も可愛いし、魅力たっぷりな動き方もする。また「世界最強の動物」なんていう話題性にも事欠かない。しかし、この本はそれだけの「奇妙な動物ショーケース」ではない。著者は研究者であり、この本に書かれていることは実際のデータ、過去の研究知見に基づくもので、いい加減な見聞によるところがない。挿絵ひとつにしても、全て出典が明らかにされておりアクセスを可能にしている。そして話は実際のクマムシの観察法にも及び、広い範囲の読者に微小生物の研究のおもしろさを教えてくれる。そういうことこそが本来の「啓蒙」というものだろう。できれば次は、ここで割愛されたクマムシの分子生物学について突っ込んだ著作をものしてほしい。こういう小生物群の研究の意味を知ることができず、無用呼ばわりすることを無教養というのである。