リンゴ園に入り込んでいた熊を観察中に、目前で猟師がその熊を射殺。この40年前の学生時代の体験以来、著者は熊との共存方法を求め、秋田や西日本の雪山にも深入りし、熊を観察研究。熊が人に害を与えず、人も熊を駆除しなくてもよい道を、命がけで求めてきた生き様が、野生熊の生態と共に詳述されています。
熊の棲息実数は分からず、今は残された毛のDNA鑑定をして、個体識別を進めている段階だそうです。確実なのは、駆除数です。○穴籠り中に、危険として予察駆除された春熊狩りの数。○里近くに出没、害をなし駆除された数。○捕獲後、人の怖さを教えて山に戻した奥山放獣の数。○猪などの罠にかかり、殺された錯誤駆除数。(これは違法なので、環境庁は統計に入れない。)この統計を見ると、'04、'06が特異年です。過去多くても1,500頭なのが、'06には、有害捕獲数は4,846頭に上り、人身事故数も例年の3倍以上約140件でした。理由は、「鳥獣保護及び狩猟の適正化に関する法律」の改正で、都道府県が生息数を把握後に駆除上限数を決めることになり、また「地方分権一括法」で、市町村にまで、駆除許可の権限が委譲された。この制度と罠・檻の乱用が、大駆除に繋がったようです。
出没の長期要因を、人間側の変化による山の環境変化で説明する説が4つあります。しかし、それらでは、突出年の原因を説明できません。著者は、気象条件に着目。人に害を与えた月日とその前後の気象データを比較。気圧が低くなる数日前に、事件が多発するのを発見。この2現象間の因果関係を推測しています。今後より精密な研究で、有意な結果が出るとすごいですね。60歳の著者は、フィールドが出来、現実問題に対処できる人材の育成を望んでいます。「なして人を襲うんだべ。そごが分がらねえ。それさえなければなあ。」と、熊への愛が、溢れる著者の心を、受け継ぐ人が待たれます。