文学フリマに併せて発行されたもの。つまり・・セミプロジン。日本の同人誌は不特定多数に対する販売用に作られる事が多いが、本書はイベントだけでなく、普通にアマゾンで購入可能なので、遂にアメリカ並になって来たか・・・・
日本に運ばれて来て一般公開されているドラッグフェニール家の城には幾つもの絵が飾られていて、案内役の執事がその絵に込められた物語を語って聞かせるクトゥルー神話オムニバス。元々このサークルでは同題の幻想オムニバスがあり、その第二弾をクトゥルー神話集にしたもの。
「マーク・ヒューズの神はいない」
テーブルトークRPGオリジナルの化身「赤の女王」が登場、著者はアダルトゲームのシナリオライターだが、登場する魔導書「狂気の暗黒神」や言及されているハスターの力満ちる異界などは本業の方に出て来ているのだろうか?
「やさしい嘘」
ショゴスと美少女の間に生まれた少年(?)を主人公としたエログロ・ホラー。
「ある記者の身におきたこと」
何かを調べて行くうちに知ってはならぬ事を知ってしまい・・・クトゥルーものの典型の一つ。
「ヌペアイキ」
ナイアルラトホテップの冗談が、本当にヌペアイキという化け物を誕生させてしまって・・・人間名の「布袋有無」には笑った。
「水音」
深きものネタ。もはや、このストーリー展開は深きものネタの一典型、王道パターン。
「クラレノを越えて」
ドリームランドもの。主人公が「新たなクラネス」と呼ばれているのは、銀の鍵なしにドリームランドに到達出来たからだろう。しかし、上甲宣之の三部作もそうだったが、日本人がドリームランドものを書くと何でホラーになるのだろう?
クラレノとは作者が設定したドリームランドへ行くまでの試練の道。ドリームランドへ行くのに銀の鍵を使わないとこんなに大変なのか。
「ただ、それだけの事」
クトゥルー神話とも非クトゥルー神話とも受け取れる作品。
「がんばれ!ダゴン秘密教団日本支部」
笑いに満ちたネタの連続。如何にもクトゥルー神話らしい遊び心に満ちた一作。
「夢見る人」
年頃の少女達の見る夢は・・・ややエロティックな作品。
「闇の中」
結局、主人公は人間では無かった・・・と言う事か。
「青色の侵食」
あとがきを読んで、漸くティンダロスの猟犬と知ったが、角度を通って出現するシーンが無かったので随分イメージが違った。犠牲者がそのまま動いていたり、猟犬が犠牲者にくっついたまま、しかもアメーバ状の姿で居続けるなど、新しい設定や描写が新鮮だった。しかし、あの作品の題材として扱い辛そうなティンダロスの猟犬を使ってまさかコメディホラーにしてしまうとは・・・オチも楽しかった。
「空よ高くあれ」
神々の乗り物だったという雲にまつわる恐怖譚。雲の形をした生体宇宙船か何かだったのだろうか。
「外なる神の誕生」
偽翻訳作品。
ヨグ=ソトースは。実は人間が創った神だった?仕掛け人は、這いよる混沌だったが・・・
「最後の絵画」
絵の作者・・・と言う女性が出現するが・・・深きものかと想ったら、クトゥルーの落とし仔だった様だ。
全体に面白かった。この調子でクトゥルーアンソロジーを続けて行って欲しい。