著者は海洋民族、水産資源の民俗学といったあたりから、鯨の問題に関心を持ち始めたのだという。すでに関連書も何冊も著しているようだ。
これまで何冊か、この人の本は読んだことがあるのだが、良いと思ったことがなかった。しかし、本書を読んでちょっと印象が変わった。
本書は、鯨の文化誌を概観し、そこに著者の意見をいくらか混ぜ込んだような内容である。鯨肉の食べ方、脂の利用、歯を使った彫刻作品、骨でつくった橋など、多種多様の「利用法」が示され、しかも、それが日本のみならず、アメリカ、南洋諸島、ヨーロッパと多くの地域を包含している点が面白い。
「意見」は、公平な立場から客観的に述べられており、信頼感がある。さらに、単に善と悪、日本対アメリカというような構図で理解しようとするのではなく、もっと違った処理の仕方を模索しているのが興味深い。
ただ、全体的には中途半端な印象が強く、もう少し突っ込んだ意見を示してくれればなと思った。