『クジラのソラ 01』です。
ラノベでスポ根、というのは、まああるでしょう。ファンタジーでスポ根というのも、『黄金の鹿の騎士団』など、無くはないでしょう。本作はSFでスポ根です。前例の有無は知りませんが、珍しいのは事実です。
あとがきにあるように、2006年夏の甲子園における早稲田実対駒大苫小牧の延長15回引き分けとなった決勝戦のようなもの、でしょうか。SFという要素があるので、そこまで熱くはありませんが。
SFというのは、科学、機械、技術といったことが主力で、スポ根とは相容れないものですよね。
本作はスポ根の方に重心を置いています。その舞台が夏の甲子園決勝戦ではなくSFということです。その分、本格的SFファンには物足りなさを感じるかも。
スポ根とはいっても、70年代アニメのようなウザったい濃さではありません。全体としては、それこそ夏の高校野球を髣髴とさせるような大会展開。周囲に群がるオトナの思惑。あとSFなのに「走り込み」みたいなのもあります。
特徴は、キャラの会話が短い台詞の連続で構成されていること。スポ根的自己主張の強いキャラ同士の会話としては現実的で良いのですが、反面個々の台詞の個性がやや稀薄で、その台詞を発しているのが誰か判りにくい部分があります。
作者の想像力、世界観は、まるで優れたアニメのようで設定やアイディアは良さそうなのですが、これだけの文章量では読者の想像力の中で再生させ切るのは難しそうです。今でも既に本がちょっと厚めなので、その辺のバランスが今後の課題でしょうか。