1992年に執筆された同題名の本の第二版.第一版は行動生態学がまさに性淘汰の理解に突き進んでいた時期でもあり,その最前線にいた著者の興奮が伝わってくるようないい本であった.本第二版はその後の研究の進展から大幅に加筆改訂されており落ち着いた性淘汰の啓蒙書に仕上がっている.
特に大幅に加筆されているところは雌による選り好みの部分と性淘汰全般にかかる両性間のコンフリクト状況の理解の重要性の部分である.いずれも1990年代の後半に理解が深まった部分である.
巻末に著者の言いたいことが箇条書きになっているのがナイス.科学の研究はセオリー通りには進まない,先行研究を鵜呑みにしてはいけない,いろいろな分野の研究者との交流は重要など研究者としての心構えに加え,至近要因の重要さ,性淘汰全般についてのコンフリクト状況の重要さを強調,さらに動物の生態に倫理を求めてはならないこと,動物の研究をそのまま人に当てはめるのは難しいことが力説されている.
叙述は丁寧で非常に良心的,日本語で読める現在最高の性淘汰の入門書だと思う.