今やジュディ・デンチ(007シリーズ)とならんで英国を代表する実力派女優となったヘレン・ミレン(第一容疑者シリーズ)。
そんな彼女が実在する「究極の職業婦人」を演じたのが本作です。
なにせ一国の象徴たる「女王陛下」に扮するわけですからさぞや挑戦のしがいがあったことでありましょう。
本作は1997年にダイアナ元王妃がパリで事故死したことから起きた王室と政府、そして英国社会の混乱の渦中でのエリザベス女王の苦悩に焦点を当てた物語です。
現実に起きた出来事を当事者たちが存命中に「ドラマ」にしてしまった点については様々な意見があると思います。
しかし実際に見てみると過剰に政治的になったり感傷的になったりすることは避けて一本の「映画」として十分楽しめる作品になっております。
この辺りのスタンスは実に「大人」ですねぇ。
最大の見どころはやはりヘレン・ミレン女史の演技でしょう。
実は出だしでは若干堅く感じられたのですが、これは実物の「形態模写」を優先しているように見えたからでしょうね。
でも、その違和感はすぐに霧散してドラマに引き込まれて行きます。
大国の象徴としてその歴史と威信を一身に背負って生きるというのが一体どのようなことであるのか、想像も及びません。
ですが一人の女性・母親・祖母、そして「組織のトップ」として描かれることで浮かび上がる人としての孤独と苦悩は十分共感できるものとなっております。
一個人としての弱さを伺わせながらも威厳を失わず孤高の存在を演じ切る女性の「生き様」を描いていて実に見応えがあります。
さて、女王陛下が評判の高い本作をご覧にならなかった理由は「人生における最悪の出来事の一つをあらためて思い出したくなかった」のだそうです。