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5つ星のうち 5.0
すべての物語はここから生まれた,
By クロアシ (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ギルガメシュ叙事詩 (単行本)
世界最古の物語として、あまりに有名な叙事詩の新訳。本訳書には標準版(前一二世紀頃)、古バビロニア版(前一九五〇-一五三〇年)、中期バビロニア版(前一五三〇-一〇〇〇年)等が収められています。このうち、ほぼ全体像が明らかにされているのは標準バビロニア語(Standard Babylonian)で書かれた標準版で、翻訳されてよく読まれているのもこの版です。重大な異同がいくつもありますので、本書のように主要な版をすべて収めた翻訳書は、古典研究の参考にもなり大変助かります。古バビロニア版の存在から、この叙事詩の成立が前一九世紀くらいまで遡ることが分かっています。ギルガメシュはもともとシュメル初期王朝時代(第二期、前二六〇〇年頃)のウルク実在の王であったといわれ、死後早い内から神格化され冥界神として信仰されていたようです。 書かれた時期を反映して思想が振れていますが、避けることのできない死を前にしていかに報われない労苦を所与のものとして受け入れるか、という観点にこの叙事詩は収斂していくようです。アキレスやベーオウルフの死とは違い、死の水を越えていくギルガメシュの最後の旅は、どこか諦観に満ちて寂寞とした印象を与えます。 なお、この叙事詩には、よく知られているように、洪水伝説や土から創られたアダムとエンキドゥのアナロジーなど『創世記』の記述の原型と思わせる部分が散見されます(他には『コーヘレト書』などとも類似の部分があります)。『創世記』の基になった『原初史』の最終編集者はバビロニアにいた可能性が高いと思われ、物語や伝説の授受あるいは伝播という面からも興味をそそります。 それにしても、ギリシア古典を遙かに越えて、四〇世紀も前から伝わる物語。時の長さと重みを考えると、眩暈を覚える程です。
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