本書はまずギリシャ共和国でのギリシャ正教の今をルポし、カトリック・プロテスタントとは異なる「知られざるキリスト教」について読者の関心の喚起が行われる。そして使徒が東地中海地域やギリシャそしてローマに布教する初期の段階から、キリスト教がローマ帝国の国教に採用され、やがてローマが東西に分裂、キリスト教世界がコンスタンティノープルを中心とするギリシャ正教世界、ローマを中心とするカトリック世界にまとまる様を追う。ドストエフスキーの読者なら重要性は分かると思うが、本書はギリシャ正教の儀礼(典礼やイコン)や信仰形態(十字の切り方)について詳しい。日本人にとってイエスの教えといえばカトリックかプロテスタントであるが、本家本元はギリシャ正教である。本書を読めば西欧中心の見方を脱し、多様なキリスト教認識を得ることが出来るだろう。ロシア正教については著者が中公新書で出している『ロシア精神の源』も有益である。