東方キリスト教会〔正教会〕は、日本人には馴染みのないキリスト教だと感じる。日本人が“聞いたことがあるレベル”の正教会は、ロシア正教やギリシア正教(私は
20世紀のキプロスの賢人・神秘家ダスカロス関連でキプロス正教を知ったけれど)だろう。いやいや、東方キリスト教が正教会だということを知らない人もいるかもしれない。そんな私達が全く知らない正教会の「歴史・教義・西方教会との相違・現況」が教養書として一般読者向けにスッキリと270頁にまとめている良書。
本著者は『
祈りの心身技法―十四世紀ビザンツのアトス静寂主義』や訳書ルドルフ・オットー『
聖なるもの』があるので、この道〔神学・宗教学〕の著者として間違いないと感じる。
本書には「正教会とカトリック,プロテスタントの違いは何なの?」といった素朴な疑問への回答になりそうな話しも明快に著述されていて、これから東西キリスト教を横断的に知りたいと考えている人にはうってつけの本になるかもしれない。
特になるほどと思ったのが《フィリオクェの問題》。私自身「フィリオクェ」という用語の意味が始め分からなかった。「西方教会が全世界キリスト教会議〔コンスタンティノポリス全地公会議〕で信条文を勝手に変えてしまった」というものらしい。東西キリスト教の大分裂〔大シスマ〕の契機になったといわれている問題だそうだ。
東方正教会 信条 ⇒「聖霊、父より出で…」
西方教会 信条 ⇒「聖霊は、父“と子”から出て…」
全教会会議で条文を改変することは禁止されていたにも関わらず西方教会が「子から」も聖霊が出ると改変してしまったのだそうだ。東西教会の相違点は様々あるが、イエス・キリストの死をめぐる解釈も全く異なり、信仰態度にも違いがあるようだ。また、ヘシュカズム〔静寂主義〕については簡潔にまとめられていて参考になります。