増補部分を含めると千ページ以上になる大部の引用辞典だが、それだけに専門家の要求にも応えられるだけの周到な配慮がされた、日本語では殆ど唯一の著作でもある。全体の約二割がギリシャ語に当てられ、残りは総てラテン語の部になる。引き方はごくシンプルで、調べたい文節の始まりの単語をそのまま各言語のアルファベット順の見出しで探す方法になる。もし見つからない場合は、巻末の増補を検索できる。また訳の後にはその文章の出典が明記されているのも親切だ。著者によれば索引も付けたかったらしいが、膨大な費用の制限の為断念したとある。
ただひとつ難点を挙げるとすれば、日本語訳がいまだに旧漢字と旧仮名遣いを用いた文語体であることだ。例えばIGNORANTIA LEGIS NEMINEM EXCUSATを引くと、法律の無知は何人をも容赦せず、となり INTER ARMA SILENT LEGESでは武器の中にては法は黙す、という具合だ。 初版が1937年なので無理もないが、中には読めない漢字が出てきて辟易することもある。もしこの労作を今後生かすとすれば、現代語への変換が課題だろう。