渋谷センター街などにたむろする、どぎついメイクのギャルと彼女らの対をなすギャル男(お)たち。僕らは彼らを、「なんか知らんけどいつもパラパラ踊ってるだけのチャラチャラした集団」という程度に、自分の世界認識の隅っこのほうに片付けちゃいないか?本書著者は書く、通称「イベサー」と呼ばれる彼ら彼女らの中には、パラパラを踊るグループもあるがそれはほんの一部でしかない、と。このように、ステレオタイプな認識を覆すことにこそ、学問の痛快さがあることをこの本は教えてくれる。
本書はその名の通りギャルとギャル男の生態を追った文化人類学だ。彼らの運営する現行のイベサーが構築されるまでの変遷から、彼らの普段の生活、組織内での位階秩序、引退後の生活、そして彼らの行動原理となる価値観まで、それこそ文化人類学的に、多角的に彼らの「生態」を解き明かしていく。詳しくは是非本書を手に取ってみてもらいたいのだが、興味深いのはやはり、「チャラい」に代表される彼ら特有の3つの価値観。「俺からすればお前ら全員チャラいよ(笑)」といいたくなるところだが、そこには若気の至りを許容する寛大さと、いつまでも女の尻ばかり追いかけていたら他の「サー人」(イベサーのメンバー)から尊敬されないという厳しさが、奇妙にも同居しているのだ。
ユースカルチャーのフィールドワークといえば、90年代に「援交少女」を対象にした社会学者宮台真司による「体を張った」フィールドワークが記憶に残るが、著者も負けてはいない。なぜならこの著者、もとはギャル男もギャル男。なんと某イベサーの代表にまで上り詰めた男である。数年前に引退し渋谷を後にした彼が、取材にて現役の後輩たちを緊張させないようにと髪を染め直し、肌を焼き直し、渋谷の街に「復帰」したというのだから、気合いの入り用がわかる。
また、一般的に言えば不良に当てはまる彼らだけに、黒い世界とのつながりがないわけではない。著者は元ギャル男なだけに、そういった問題点と将来的な課題にも目を向ける。修士論文を元にした力作。