夜毎、ギグと称してイタズラ電話に耽る、ヒムロック的引きこもり・竹之進。そんな彼のために、セーラー服を着て渋谷センター街へ覚せい剤を買いに出かける母親。脈絡なく挿入される数々の奇天烈なエピソード・・・・・・。というような物語をいくら説明しても、本作の面白さはきっと伝わらない。
山上たつひこ、いがらしみきお、古谷実など、多くの革新的ギャグ漫画家が、先鋭化をつきつめた末に、「ギャグ」の範疇をハミ出したシリアスな作品を発表している。ただ、それらの多くは、彼らのギャグ作品ほどのテンションを維持できておらず、必ずしも成功しているとはいえない。
長尾謙一郎は、前作『おしゃれ手帳』から一貫して、不条理とも悪夢ともつかないようなキワどい作品を描き続けており、針が「向こう側」へ振り切れてしまう寸前で、かろうじてギャグ漫画の領域に踏みとどまっている印象を受ける。ギャグなのかシリアスなのか、安易な範疇化を拒む本作は、読者をどこまでも宙吊りにする。
ギャグ漫画の臨界点を弄びながら、作者は意地悪く読者を試しているに違いない。
一体、この作品は最終的にどこへたどり着くのか。全く目が離せない。