とまずはカバーの帯、
「書店の方へ。この本にはビニールを被せないで下さい。」
嗚呼、マジなんだこの人。鳥肌が立った。
認知症の母と、息子のストーリーが前半で出てくるが、実に残酷を極める。ストーリーを組み上げる時、主張したいテーゼに背反し感情移入の妨げとなるものをある程度排除していくのが定石であり、山場への近道だと思うが、この人の場合、ただただマイノリティの現実を描ききることに全く容赦しないのだ。言い換えると「キーチ」には事実上、山場というものが存在しないのかもしれない。現実とは山場の連続なのだから。そしてそれは結果的に、暴力的なまでのメッセージの連続と血生臭さを放っている。このクオリティで、まさに世の中の最下層や掃き溜めにある超現実を、誰が描けただろう。これを描く時、新井英樹はどれだけの暗澹や苦痛、そして葛藤に堪えているのだろう。いつも思う。
頑張ってほしい。