スコセッシ&デ・ニーロ、70年代から90年代に掛けて、極めて暴力的で切れかかった男たちの生き様を痛烈に描いて、壮絶なヴァイオレンスと共に、現代アメリカ社会の狂気とそこに根ざす者たちの孤独や強迫観念を投影させた傑作を連発させたハリウッド最強タッグとも言える2人が、あの「レイジング・ブル」の後で製作した異色のブラック・コメディ。幼少期から目立ちたがりで大スターを夢見ていた男が、憧れのコメディアンに執拗につきまとい、邪険にされるや、やはりコメディアンの熱狂的ファンでありストーカーの女性と誘拐を画策し、まんまと成功、自らを全米超人気トーク・ショーのゲストとして出演させるよう要求する。コメディとのカテゴリーで語るには余りに生々しく、嫌悪感を感じさせるパートもあるが、その強烈な風刺性と社会性は紛れもなくスコセッシ・タッチ。誇大妄想で狂信的、そして偏執的な主人公を、デ・ニーロが、危ない中にも人間味を感じさせる名演で魅せる。自身が出演したTVショーを、嬉々として好きなバーテンダーの女性(デ・ニーロの当時のパートナーだったダイアン・アボット)に得意気に見せる姿は、「タクシードライバー」での、都会派クール・ビューティのシビル・シェパードを、初デートで、NYの高級ポルノ映画館に大真面目でエスコートしたトラヴィスの姿に重なる。その他、まるでhimselfを演じたかの様なジェリー・ルイスの、「底抜けシリーズ」で見せた銀幕での破天荒なイメージとは違うストイックな演技も、ミック・ジャガーの妹(笑)の様な面相のサンドラ・バーンハードも良い。今回久しぶりに再見したのだけれど、これってこんなに凄い傑作だったんだ。