テロリズムや中東を描いた優れた映画が次々生み出される近年ですが、その一方で映画への批判も多い。反米的観念からテロに好意的態度を取る類が多いですが、これは中東諸国の内部要因を全く無視した外部への責任転嫁であり、私には全く賛同できません。その点本作は、テロを数多く生み出すサウジアラビアの内情を描いた点で優れています。
冒頭の短い解説の通り、建国も含めてサウジ王室とワッハーブ派は持ちつ持たれつの関係にあります。反欧米を掲げた過激な原理主義派を守護する形で王国は成立しましたが、石油収入による王族の腐敗は国民の失望と離反を促し、王室がワッハーブ派からつけ込まれる事になりました。王室はワッハーブ派を懐柔するためにオイルマネーを垂れ流し、小中学生に反ユダヤ主義や反欧米主義を吹き込む過激な教育を放置した結果、オイルマネーの多くが国外にも流れ、テロ組織が国内外で増殖する最大の原因となりました。
またアメリカはサウジに対して、イスラムの近代化や石油依存経済の改革を促す圧力をかけてこなかったため、結果的に19人の同時多発テロ犯のうち15人がサウジ人だった事実に象徴されるように、両国の関係は極めていびつな物になっています。
両国の複雑な関係は前半の、FBIとサウジ警察の対立にも象徴されますが、後半はお互い譲歩し合う事で、フルーリーたちFBI捜査官がやがて、アル・ガージ大佐やハイサム軍曹の気持ちを理解できるようになり、無二の戦友となっていきます。ごく普通のアラブ人の真っ当な生き方や考え方こそ敬意を払われるべきですし、そこに互いを理解し合う余地があります。また肉親を失った子どもたちの怒りや悲しみを理解し、彼らをテロに走らせない教育を普及させる事もアラブ世界では重要ですが、本作は単なるアクション映画ではなく、サウジやアラブ諸国の内情について、考えさせられる事の多い映画でした。