プライヴェートジェットで世界中の商談場所に移動する、数億ドルの資産を保有するジェット族…一体どんな人々なのでしょうか?何を商談するために彼らはそんなに世界中を忙しく動き回っているのでしょうか?世界最大級の独立系資源商社を立ち上げたマーク・リッチはそんなジェット族の一人でした…資源トレーディングってどういうことをするんだろう?ビックディールの世界に興味は尽きません。
資源を持っていても流通を持たない途上国にとっては買い手が必要だし、経済制裁を受けている産油国はマーク・リッチの様な国家関係の間隙で活動できる信頼できる有力トレーダーを必要としていました。それまで石油メジャー(セブンシスターズ)が川上から川下まで抑えていた市場で、マーク・リッチは市場価格が適用されるスポット市場を創出したパイオニアになりました。
地政学的な関係から取引ができないはずの両陣営がマーク・リッチが第三国に設立したペーパーカンパニーを介することによって資源のやり取りをする…それは石油の出所を曖昧にするという意味で「資源ロンダリング」であり、正に安全保障上の奇妙なパラドックスでした。売りたいが売り先がない人と、買いたいがそのあてがない人を結びつける…各国の切実にして公にできないニーズをも取り込んでマーク・リッチ社は世界最大級のグローバル商社に成長しましたが、サービスを提供する中で中東和平にも関与する程の国際政治の陰のファクターとなっていきます。
普通はそんなファクターは決して表に出てくることはない様ですが、ジュリアーニ検事(前ニューヨーク市長)の訴追キャンペーンのターゲットとなったことからマーク・リッチは世間に知られる存在となりました。マーク・リッチは陰のファクターが表舞台に姿を現した稀有なケーススタディを我々にもたらしてくれたのです。
国際政治経済の力学を資源トレーディングの切り口で勉強できる文句なしにお奨めの一冊です。