今や演劇界のみならず、映画、文学、テレビ、ヴァラエティと多角的に活躍する松尾スズキ。でも、今DVDを観ると、改めて舞台のフィールドでこそその才気が窺えるクリエイターだと思う。
これは、いつの時代かの日本国。3つの部族に分断される中で運命に翻弄されながらも生き抜く、生きる為に何かを“犠牲”にした女性ケガレの物語。
過去と現在、現在と未来、そして現実と幻想、時系列がめまぐるしく変換する展開。
ロック、バラード、ダンス等劇中歌われる多ジャンルの楽曲の中にもどうにも笑いのテイストを盛り込まなくては気が済まないような歌詞(笑)。
個性的なキャラクターたちから放たれる破天荒なダイアローグの数々。
多重構造に喜怒哀楽、正に様々なドラマがミキシングされたスピード感覚溢れるミュージカル。
もちろん、松尾スズキ作演出だけに一筋縄ではいかない面白さ。2時間40分にも及ぶ長編だし、決して分かりやすいストーリーではないけれど、観終わった後の充足感はただ事ではない。
疑似人間として製造され戦場に駆り出され、戦死した後は缶詰にされ食糧となるダイズ兵の悲哀とか(「ブレード・ランナー」)、ダイズ兵を回収して生き延びている部族とか(「日本アパッチ族」)、ケガレの物語世界を支配しているようで実は、、、の狂言回し的なマジシャンの話とか(「未来惑星ザルドス」)、観る者の映画や文学的記憶を呼び覚ますようなサイド・ストーリーも印象的。
阿部サダヲ、秋山菜津子、荒川良々、クドカンらお馴染みの役者たちも総出演し、演劇人松尾スズキの真髄に触れたい人には是非お薦め。