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主人公はコリバという初老の男で、彼はキクユ族の伝統がもう地球上では存続できないことを痛感しています。西暦2123年、すでにサバンナは一世紀以上前に消滅しており、ジャッカルも動物保護地区へ追いやられる時代です。そんななか、ヨーロッパの大学で学び、望めば豪勢な暮らしもできたかもしれないのに、彼は息子にもわかれて新世界キリンヤガへ旅立つのでした。生き残った最後の祈祷師――ムンドゥクとして、そこをキクユ族のユートピアとなすために。
というわけで、この本は主にキリンヤガを舞台とした連作集です。ひとつひとつのお話は読み切りですが、時間軸のとおりに並んでいて、全体で大きなひとつの物語になっています。各編、何年何月と明記されていくので、ブラッドベリの『火星年代記』みたいな風情もあります。
ムンドゥクは祈祷師であり、呪術使いであり、物語の語り部である、ある種のシャーマンでして。その彼が語るのはイソップ物語みたいな寓話なんですが、登場する動物がハイエナやインパラやシマウマで、いつも失われたサバンナを――彼の記憶の中にしかない楽園を髣髴とさせるのです。
ユートピアとは桃源郷のようなものをいう言葉ではなく、もともとは「どこにもない場所」を意味しますが、では新しい楽園はどこにあるのかということをよくよく考えさせられました。
これはSFと呼んでいいのかわからない一冊です。でもユートピアについて考えずにいられなくさせるのは、そうして未来への警鐘として人々の胸にひびくものがあるのは、やっぱりSFなのかなあと思います。
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