本書は、西洋美術史を専門とし、京都大学教授である著者が
絵画に描かれたイエスと彼の身体を巡る議論を通じ
キリスト教文化の多様性や
ヨーロッパ文化の根底を探る著作です。
イエスをめぐる絵画史・・・
と聞くと、
些細な問題を長々と論じた、文字通り神学論争的なものや
具体的な論拠を示さないフワフワとした議論―を思い浮かべる方も多いはず。
しかし本書は、図像学、神学、文化人類学など
特定の学問に拘束されない自由な発想と
厳密かつ論理的な検証に基づき記されており
そうして偏狭さ・危うさとはまったく無縁です。
また、
ミサで使用されるワインとパンは
いつ、どのようにしてキリストの血と肉になるか?
など神学等を学んでいないとイメージしにくい議論が
数箇所ほど登場しますが、
平易で要点を押さえた記述なので、容易に理解が可能できます。
イエスの容姿や心臓、さらに聖痕めぐる議論など
どの議論も興味深いのですが、
とりわけ
フレイザーの議論やミケランジェロの絵画をきっかけに
聖書に登場するハマンとイエスの関係
そして、キリスト教とユダヤ教の深層的なつながりを論じた箇所からは
まるで極上の推理小説を読んでいるような知的興奮・昂揚感を感じました。
今までなんとなく長めていた宗教画が、
何倍も面白く観賞できるようになる本書―
図像学に触れたことがある方はもちろん、
これからヨーロッパ等へ旅行に行くという方や
西洋画に関心を持っている方には、文句なしにおススメします☆