古代史好きの私には非常に面白く読めました。
全体構成が散漫で、誰がしゃべっているのかわからない変な語り口になっていたりはしますが、調査の過程を時系列になぞって行く形ですので筆者の驚きや興奮がダイレクトに伝わって来ます。
これまで世界の古代遺産を見て回っている中で、キリスト教建築物にはずっと違和感を感じていました。聖ペテロなどの使徒の遺骸はあちこちに安置されていて高貴な存在として信仰の対象になっているのですが、イエス・キリスト本人の存在感がどうにも希薄です。彫像としてまつられてはいますが教えを請う師としての人間くささが存在していません。何でもっとイエス・キリスト本人の姿を知ろうとしないのが不思議でなりませんでした。
この本で一番驚いたのは、ユダヤ教徒もキリスト教徒もイエス本人の遺骸が出て来ることを望んでいないという指摘でした。
ユダヤ教徒にとってキリスト教はローマ人の異教に過ぎずキリスト本人は興味の対象外であり、ユダヤ人キリスト者の存在は歴史から抹消したい汚点です。キリスト教徒にとってはキリスト復活の逸話があるため遺骸が出てくる事は好ましくありませんし、キリストが両親,奥さん,息子と一緒に墓に入っていたなどという庶民的な落ちは神に等しい存在にとって平凡過ぎます。
今回はたまたまTV局に売り込める企画になるということで、お金をかけた調査ができてやっとキリスト一家の墓らしいという所まで突き止められた訳ですが、それが無かったら黙殺されたまま墓は潰され、何もわからないまま闇に葬り去られていた所でした。権威がある組織が調べた結果では無いから信じられないという意見を言う方も居ますが、上記の様な背景があるため権威のある組織が取り組んだ結果が信頼に足るものになるとは到底思えません。人間というものは信じたいものしか信じない生き物ですので、信憑性については読者一人一人が判断するしかありません。