聖書に次いでよく読まれた書物であるといわれるドイツの修道士トマス・ア・ケンピス著『De imitatione Christi』の邦訳。
全体は4部に分かれ、かつそれぞれが多くの章に細かく分かれており、総計100章以上ある。各章にタイトルが付いているので、
章全体の内容を把握してから読むことができる。途中から信徒とキリストとの対話形式となり、キリスト者としての身の処し方が論じられる。
とにかく本書を通じて強調されていることは、世俗的なものに固執せず、ただひたすらに謙遜して身を低め、
自分自身さえ捨て去って苦難や非難にも耐え、ひたすらに神を求めるべきことである。人間である自らの弱さ、もろさ、
罪深さをよく認識して、人に悪く言われようと軽蔑されようと謹んで耐え忍び、何か手柄などたてても自分の功績とはしない。
まったき真理であり常に公正である神を信じ、信仰に帰依し、人知を超えた難解な問題に対する深い知識を無理に得ようとはしない。
本書はそのような生き方を切々と説く。当時のキリスト教信仰や修道院生活の手引き書でもあるが、現代の自己啓発本的にも機能したかもしれない。
人生は儚いものであり、明日があるとは限らない。すぐに頑張らなければならないのである。また、死後の幸福を考えるならば、
現世のことは取るに足らないし、世評など何の関係があろうか、というスタンスが貫かれている。
活字はやや小さいが、訳文は内容のわりに難解でなく読みやすく、聖書が引用された場合(非常に多数)は該当箇所が記されている。
巻末にはごく簡単な紹介(著者の生涯や、翻訳にあたって気をつかった事など)が付されている。