この本に出てくるのは基督教ではなく、あくまでも「きりしたん」である。
というと語弊があるかもしれないが、戦国初期に来航したフランシスコ・ザビエルがもたらし
た基督教が、海禁政策と禁教による弾圧により時代を隔てても物語として語られてきた凄さ。
そして、時代の変遷が土着の伝説と融合して、日本独自の伝説として消化される経緯が興味深い。
話の一つ一つが丁寧に語られており、宗教史だけではない風俗史としてもわかりやすい。物語
としても、基督教に興味がない人が読んでもおもしろく読める好著である。
話の中でキリシタンを虐殺し、死体を投げ捨てた井戸を日蓮宗のお寺が管理しているという話
があるが、お寺の住職が「キリシタンであろうと誰であろうと亡くなった人を弔うのは住職の
勤め」と語られ、井戸には花が手向けられていたという話が印象に残った。