ジム・トンプソンと言うと、50年代から60年代に掛け、パルプ・マガジンに犯罪小説を連打させ、その死後アメリカ本国では評価が高まった無頼派作家であるが、暗黒・ミステリー映画ファンの間では、「ゲッタウェイ」や「グリフタ―ズ」の原作者であり、スタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」や「突撃」のダイアローグ・ライターを手掛けた人物であり、そして、ディック・リチャ―ズの「さらば愛しき女よ」にシャーロット・ランプリングの夫役で出演していた事で知られている。
その映画化の際には、今や真っ先に原作者の名が紹介されるほど、その作風は濃厚で容赦ないのだが、今作も、いかにも背徳的で倫理観も道徳心も全く存在しない暴力と愛欲が横溢する作品世界となっている。
沈潜した殺人本能、サディスティックで攻撃的衝動、倒錯した剥き出しの欲情、そして、冷酷なニヒリズム。
イギリス人監督マイケル・ウインターボトムは、スタイリッシュさを排して、そのねっとりとした漆黒の心の闇と狂気を重厚に描いている。
ケイシ―・アフレックは出ずっぱりの熱演だが、曖昧さと確信さがない交ぜとなった表情と、完全にイッテいる“眼力”が、トンプソン世界の主人公として際立っている。
ジェシカ・アルバもケイト・ハドソンもよく出たよなぁ。トンプソンの映画化作って、殆ど“男たち”しか印象に残らないのだけど(例外は「グリフタ―ズ」の超ホットなアネット・べニング!)、哀切さを漂わせながら、頑張っている。
アルバは、年を重ねる程に露出度が多いアブナイ役柄が増えてきているような気がするが、、、イイ女だけど、ハドソンの凄みにはちょっと足らないかな。
主人公は、何故に殺人をいとも平易に続けるのか?我が身に容疑が迫っていても、己の犯罪を隠蔽する事に腐心している様にもあまり見えない。自らの内にある破壊衝動なのか、歪んだコンプレックスに依るものなのか、やはり、サイコ・キラーのなせる性なのか、ここら辺は観る者の判断に委ねられる。
パルプマガジンのスクラップブックの如き、俳優たちがクレジットされるソウル・バスタッチのオープニング・タイトルや、オペラからジャズまであらゆるジャンルの音楽を効果的に配した音楽センスも洒落ていた(サントラ盤が欲しい)。
その音響と光と闇のノワール様式と撮影文体を堪能する為にも、ここは当然BDをチョイスすべき。
ラストの決着のつけ方、後味が悪いと思いきや、その後流れる“Shame on you”で大爆笑、これってひょっとしてブラック・コメディなのか、と一瞬思った。
個人的には、いくら犯罪映画とは言え、女性をあそこまで殴打する描写が必要か、とも思えるが、アルバの女優魂も加味して★5つを捧げたい。