エル・ウッズ(リース・ウィザースプーン)はファッションを学ぶ超が付くお嬢様大学生。社交サークル「デルタ・ヌウ」の部長で、政治家の御曹司ワーナーとも熱々の仲…とまさに順風満帆の生活を送っていた。ところがある日、ワーナーから一方的に別れ話を切り出されてしまう。理由は、「ブロンドの女性は政治家の妻にふさわしくない」。めげないエルは、政治家の妻らしくなるべく、超難関であるハーバード大のロー・スクールを目指すことにした!
米国では絶大な人気を誇るリース・ウィザースプーン主演による痛快青春コメディ。若年層の圧倒的支持を受け、MTVアワード最優秀主演コメディ賞を受賞した。原題の”Legally Blonde”とは、主人公エルがブロンドで法律家を目指すことから、"Leagally Blind"(法に疎い)という決まり文句をもじったもの。2003年には、続編『
キューティ・ブロンド2/ハッピーMAX [Blu-ray]』、その後も(ウィザースプーンは出ていないが)『
キューティ・ブロンド3(「キューティ・ブロンド」付)〔初回生産限定〕 [DVD]』が作られた。
物事を深く考えないということは、時として最高の武器になる。つまり、それが不可能かどうかなど全く考えずに、とにかく行動に移せるからだ。この「やったらやれる」―淀川長治氏が、ハロルド・ロイドの作品を語る時、よく"Come and get it!"精神と言い換えていた―という精神と行動力こそ、アメリカという国を西部開拓時代から支えている根本的なものである。その猪突猛進の精神を"Dumb Blonde"(オツムの軽いブロンド娘)が発揮して、因習を打破するということがこの作品の痛快さであり、その落差から突飛な面白さが生まれる。劇中で彼氏に振られたエルが、「ブロンドで胸が大きいだけで頭がカラッポだと思われるのよ!」と嘆くように、マリリン・モンロー、ジュディ・ホリデー、ジェーン・マンスフールド、そして最近だとメラニー・グリフィス、ジェニファー・ティリーに至る"Dumb Blonde"の系譜は、映画史において不当に蔑まれて来たわけだが、彼女たちの遺恨を晴らすかのように(?)、輝くばかりの豊かなブロンドが印象的なリース・ウィザースプーンが大活躍する姿を観るのは胸のすく思いがする。"Dumb Bronde"のキャラクターに加え、秀でたオデコからは、行動的で聡明なもう一人のブロンド女優、キャロル・ロンバードの味さえ感じさせるという点を考えると、ハリウッド映画史上最強のブロンド娘とさえいえるかもしれない。"Dumb Blonde"というありがたくない蔑称と映画史上の類型的な役柄を返上し、"Smart Blonde"に変身というわけである。
典型的なご都合主義ではある。ハーバードのロー・スクールを目指してからは、トントン拍子で入学にまで漕ぎつけ(コッポラに自己紹介ヴィデオまで撮ってもらうゴージャスぶり!)、ハーバードでも優秀な成績を修め、挙句には主席で卒業してしまうあたりのハリウッド的団大円の単純さ、安直さ。しかし、場違いな目がチカチカするような色の高級服に身を包んで、満面の笑みを浮かべてひたすら前進するエルの元気な姿を眺めていると、そんな疑問でさえも、そのパワーの前にこなごなに砕け散ってしまうぐらいだ。彼女の一見とんちんかんな天衣無縫ぶりが、この作品の底抜けに明るい楽天的な魅力になっていることは間違いない。単純であることはとかく非難の対象になるが、ハリウッド映画においてそれは美徳であり、単純だからこそ、作品のテーマが力強く響いてくることもあるのである。だからこそ、ラストの生徒総代でのエルの演説も(この作品のテーマをズバリ解説している)、説教臭さを感じさせずに観る者の心にスッと入ってくるのだ。観終わった後、これほどいい気分にさせてくれる作品は、最近のハリウッド作品ではそうはない。
『
燃えよドラゴン [Blu-ray]』で、ブルース・リーは"Don’t Think. Feel!"(「考えるな、感じろ!」)という名言を放った。そして、この作品で、リース・ウィザースプーン扮するエルは"Don’t Think.Go For it!"(「考えないで、行動するのよ!」)という単純だけれども、アメリカの行動主義的なとても大切なことを身をもって教えてくれているのである。
本Blu-rayは、新たにHDテレシネされたマスターを使っていることもあり、鮮やかな色合い、細やかなディテールの表現が素晴らしい画質。5.1ch DTS-HDマスター・オーディオの音声も、バランスがよくクリアだ。日本語吹替えも収録。特典には、2種のコメンタリーを始め、映像特典も満載という具合で、どれも楽しいが、日本語字幕なしという言語道断の仕様。
MGM/UA作品を販売する20世紀フォックスによると、契約上、日本語字幕がつけられないということだが、そんな話は、映画ライセンス販売の世界で聞いたことがない(日本映画を海外に販売する際、逆輸入を防ぐ意味で、英語字幕の焼き付けを義務づける契約などはあるが)。コメンタリー、映像ともに収録されているということは、(北米以外での)権利処理自体は出来ているわけで、字幕なしなのは、単に手間とコストの問題なのではないだろうか(あくまで推察だが)。せっかく、本作がBlu-rayというパッケージ・ソフトとして発売されたのに、思わぬところでミソがついたと言わざるを得ない。その点で、星1つ減点。