最初の「日々の春」がみずみずしくてよかった。たんたんとほんのりと真っ直ぐな愛情がまぶしかった。「乳歯」は今度はすさんでいて良かった。いわゆる『下流』の描写の生々しい感じが珍しかった。感情がレアな感じが良く出ていた。
しかし、全体としてみると作風にも仕上がりにもややばらつきのある短編集だ。何かの事象を共通項にして全くの別人をつなげてゆく手法は、吉田が一時期凝った手法だが、あまりうまくいったとは思わない。表題作も、なぜ同程度のクオリティをもつ作中小説が入れ込んであるのかわからない。技巧におぼれた感じ。それぞれ別な物語で十分面白かったのに。巻末の初出をみると1998年から様々な年代に書かれていて、ああ、と納得した。
装丁がとてもすてき。