メイン州チェンバレン。地元の高校に通うキャリー(シシー・スペイセク)は、内向的な少女。その性格ゆえにクラスメートたちから苛められ、また、家では、狂信的な母親(パイパー・ローリー)に禁欲の教えを説かれ、いつまでも少女のままでいるよう強要されている。孤独で居場所のないキャリーは、感情を抑え込み、いつしか、怒りが爆発した時に、超能力を使えるようになる。そして、クラスメートたちがプロムナイトで仕掛けたいたずらで、キャリーの怒りが爆発し悲劇が起こる…。
スティーブン・キングのベスト・セラー小説『
キャリー (新潮文庫)』を、精力的に作品を作っていた時期のブライアン・デ・パルマが監督したホラーの秀作。今でこそ、キングの小説は、ほとんど映画化されることになったが、本作はその口火を切ることになった作品としても有名だ。キャリー役には、当初、エイミー・アーヴィングが予定されていたものの、オーディションに来たスペイセクの演技を見たデ・パルマ監督が、彼女を主役に決めた。2013年には、クロエ・モレッツ主演のリメイク作が公開される予定。
ジャンル分けをすると、確かにホラーということになってしまうかもしれないが、本作は、それ以上に、思春期の孤独な少女を描いた(悲痛な)青春ものという印象が強い。特殊な超能力を持った少女というキング的なギミックが付加されているものの、芯にあるのは、誰からも愛されない少女を扱った普遍性を持つ可哀想な話なのだ。そういった意味では、ホラー風味でアップデートされた『
散り行く花 (トールケース) [DVD]』と言ってもいいかもしれない。実際、本作のキャリーもまた、リリアン・ギッシュ演じるルーシーのように、常に心に怯えと恐怖を抱え、安息の場所を見つけられない少女だ。唯一の庇護者であるべき母親に愛情を求めても、愛情の名の下に虐待を受ける歪んだ親子関係の痛ましさ、切なさ。それでも母親を愛そうとするキャリーの姿には(「マミー!お願いだから止めて!」)、胸が締め付けられる。ホラー的要素も十全に機能しているが(しかし、過剰にならず、抑制が効いている)、全体としては、怖いというよりは、キャリーの心の奥底を反映した悲しみに満ちた作品なのだ。
デ・パルマは、心細げなキャリーに寄り添うような形で丁寧に演出しながら、同時に、彼お得意の映像的技巧を存分に散りばめて話を進める。冒頭の女子更衣室での耽美的なスローモーション、めまいがするようなキャメラの360度回転撮影、流麗なキャメラ・ワークの長廻し、グラフィカルな画面分割…等々、ともすれば、技巧だけが目立ち、話から浮いてしまいかねないが(実際、80年代以降のデ・パルマ作品では、若干あざとくなる)、本作では、そういった技巧が話に密着している。また、サスペンスとショック演出も巧みに使い分け、ホラー作品としての本分もおろそかにしていないのは(プロム以降の恐怖の畳みかけは絶品!)、ヒッチコックの後継者を自認しているデ・パルマ監督ならではだろう。
タイトル・ロールのスペイセクと彼女の狂信的母のローリーの演技合戦は、まさに鬼気迫ると言う形容がぴったり。当時、27歳という年齢にもかかわらず、(ほとんど化粧をしていないとはいえ)無防備で怯える高校生を演じるスペイセクに全く違和感がないのが驚きだ。そして、その大人しい人格が、怒りで震え、全く別人の(血まみれの!)殺戮者になる凄み。キャリーの2つの顔を演じ切った彼女の空恐ろしいまでの力量に敬服するしかない。対するローリーも、ほとんどコメディになる寸前で踏み止まって、狂気の人物を圧倒的迫力で演じている。不気味さとともに、どこかユーモアもある造形が素晴らしい。エイミー・アーヴィング、ナンシー・アレン、ジョン・トラヴォルタといった後のデ・パルマ組(『
殺しのドレス (2枚組特別編) [DVD]』、『
ミッドナイトクロス [DVD]』)のフレッシュな魅力も、画面に彩りを添えている。
キングの原作が、デ・パルマの華麗で手だれの演出、素晴らしい俳優たちの演技によって、映画的に美しく翻案された、もはや古典と呼ぶべき作品だ。
本DVDは、一応、新たにテレシネ、(最低限の)レストアがされたマスターを使っているようだが、細かいパラ(キズ)が残り、全体的に靄がかかったような野暮ったい色調で、ディテール表現も甘めの画質。音声は、5.1chサラウンドとモノラルが収録され、どちらも明瞭。
特典には、以下のものが収録。
●ドキュメンタリー『キャリー』のキャスティング(約43分)
●ドキュメンタリー『キャリー』の製作秘話(約40分)
●『キャリー』のミュージカル化(約6分)
●アニメーション・フォトギャラリー(約6分)
●予告編
画質はまだまだ改善の余地があるものの、MGM/UAらしからぬ(?)特典満載で、本作をより深く楽しめる1枚になっている。