三杉淳という選手は、「キャプテン翼」という作品のなかで実に特異な存在である。武蔵FC、武蔵中学という超エリートコースの真っ只中を歩み、しかもそのいずれにおいてもキャプテンを務める選手だ。そして「心臓病」というハンデ(宿命)を背負ってもいる(ただし、このハンデを彼はのちに克服することになる。それもまた、とてつもない精神力を要することであるが)。三杉本人はこれをハンデとは必ずしも思っていない点が凄い。
小学生編の全国大会の準決勝で南葛SCは武蔵FCと対戦したが、この試合はしびれるゲームであった。むろん翼にとっても三杉にとっても、である。「最後の最後でボクはよみちがえた。・・・まだまだボクはあまかった。やっぱりサッカーはむずかしいよ」という彼のセリフは、天才的プレイヤーとして設定されている三杉淳の言葉であるからこそ深い意味をもっている。そう、翼のプレーが三杉にそう語らせたのであり、翼は試合のなかでどんどん成長してゆく選手であった(なお翼の宿敵である日向小次郎もまた成長型の選手といってよい。三杉淳率いる武蔵中学との東京都大会決勝戦で勝ちはしたものの、かつてのファイティング・スピリットを減退させていた小次郎は、かつての恩師である吉良監督のもとを訪れ、そこでタイガーショットを生み出すのだ。したがって、それは三杉との戦いを通じて誕生したシュートといってもよいであろう)。
翼と対峙するいわば完成型選手である三杉淳は、「ガラスのエース」や「フィールドの貴公子」という呼称によるイメージが強いが、彼の存在価値をそうした「呼称」のみで考量してはいけないだろう。作者が三杉淳に本作品のなかでどのような位置づけを与えているのか、今後も少し考えてみたい。いずれにせよ、本巻はDVDともまた違う迫力を作画から十分に感じとることができた。三杉淳執念のゴール(4点目)も心に残った。「華麗」ではなく「泥臭い」シュートにも、この試合にすべてを賭ける彼の意気込みを感じずにはいられない。第31巻(ジュニア・ユース大会)やDVDのレビューもあわせて参照いただきたい。私なりに「キャプテン翼」という作品を考察している。