シリーズ完結巻。
今巻ではレイというキャラが登場する。前作のエリザベートといい、相変わらず『異端者』(という正常な者)が生き生きと動いていると思う。
目まぐるしい展開のボルヨルでは感じられなかったが、作者が根本で描いているのは「バトル」ではなく、「キャラのぶつかり合い」だと分かった。バトルの外観に目を引かれると「このふざけたインフレいい加減にしろよ。解決できないだろ」と思うが、毎回杞憂に終わり、落ち着くべき処に決着する。キャラどうしの全力のぶつかり合いにより、解放がもたらされる。河原で殴り合いの喧嘩をして「お前なかなかやるな」「お前もな」というあれに似ている。
もちろん、都合よくばかりはいかない。ぶつかり合っても絶対的に解り合えないこともある。今作ではそのような極限的な戦いも描かれている。
それでも惨めさが残らないのは、キャラというのは、それぞれが一個の世界を形成するほどの奇跡的な力であり、絶対的な完成品であるからだ。だから、全てのキャラを称えたくなる。もちろん優劣では語れない。そのようなものが、キャラが持っている『魂』の正体でもある。どのくらいの『魂』を込められるかが、あらゆる行為の鍵を握っている。物理的な法則はもちろん、生死の法則さえも表層的なものに過ぎず、とても気持ちよく吹き飛ばされてしまう。『そんなことは物事の本質とはなにも関係ない』からだ。このやみつきの快感は表現しがたい。今作は短いことが理由でボルヨルよりもバトルゲームの興奮は多くないが、キャラの内面の披瀝には深みが増している。この作者は疑いなく天才的である。
個人的印象として、今作は最高到達点としては前作に勝っていると思う。ただ、前作開始時のアイリスとの出会いイベントのような、「初手の切れ味」に欠けた感はあった。そして、作者も語っているように、分量が限定されたため、過去編は駆け足になってしまった。前作のような多い分量で全編を読みたかったところである。
次回作にも、とても期待したい。
ぺたんこさいどさんの絵も非常に良かった。