非常に貴重な一冊であるのは間違いありません。
ページ数から購入時に想像していた以上にコンパクトでした。文章が淡々と割り切りすぎるほど割り切っており、その筆致で究めてむごい数々の逸話(奥様の御骨を自宅焼け跡から掘り出し、バケツに入れて奥様御実家まで届けに行って再度被爆など)が実にさらさらと紹介されています。間違いなくあったであろう、この手の書籍にはしばしばある、血を吐くような彼等の思いはことごとく削られています。放射線被害についても巻末でようやく語られる程度でまだまだ未知の「ぼんやりと怖いもの」認識です。
これが1955年時点の戦勝国の記者による原爆観だった、冷静というよりは鈍麻しているのが二重被爆者の方々の証言と同じほどに大変恐ろしいです。わずか10年後、その地で取材したプロでさえ、その恐しさを把握できていなかったという点もこの本に重要な意味を与えていると思います。この事実も決して風化させてはいけないでしょう。