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そこで起こる様々な人間模様――しかし主人公キノは決して自分から関わりません。
人間をカリチュアライズして描いた小説──と、言ってしまえばそうです。登場する人々は総じて人間の愚かさのヴァリエーションです。普通この手の話は読後感が悪くて憂鬱になったりするものです。
ですが、これほど人間の欠点を並べ立てておいてイヤミにならないのは、作者の、世界に対する『慈しみ』のようなものが感じられるから、でしょうか。愚かしさを描きながら、一度だけ通り過ぎてゆく人々の不思議ないとおしさ。それがこの小説の魅力の一つです。
キノは卓抜した銃の使い手でありますが、戦うのは自分の身を守るときだけ。正義の味方よろしく何ら利のないことで人助けなどしないのです。すがりつく人々に、実にあっさり、「すみません。それはできません」と答えるのです。そんなときキノは冷たくもなければ、申し訳なさそうでもないのです、ただ、事実を言っているだけ。
そして、撃つべきときは冷静に正確に確実に撃つのです。相手にどんな事情があろうとなかろうと。普通、知り得ないであろうことを、この作者はとても自然に、登場人物に「知らせない」のであります。考えてみれば人は相手のことを克明に知らなくたって戦えるのです。
連作短編だと次第にマンネリ化しがちだとおもうのですが、毎回「意外な結末」に持っていく手腕は大したものだと思いますし、どこまでも同じレベルの話かと油断していると突然秘密が明かされたり……この作者はストーリーテーリングにおいて名手だと思いました。
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