■「キッド・ピストルズの慢心 ―キッド最初の事件―」
キッドが、自身の生い立ちと犯罪捜査に携わるように
なったきっかけを一人称で語っている番外編的な作品。
■「靴の中の死体 ―クリスマスの密室―」
靴の製造会社の会長・シューメイカー夫人が、クリスマスの夜、
自宅の庭にある靴の形の館のなかで、何者かに殺害された。
現場で死体となって発見された放蕩息子の四男が、犯人と思われたが、
本館と犯行現場の館の間にある、雪の積もった庭には夫人の靴跡しか
残っておらず、しかも、検視解剖によると、四男のほうが母親よりも先に
死んでいたらしく……。
舞台や手がかりに靴を配した、まさに靴尽くしの作品。見立てに必然性が
あるのが秀逸ですし、何といっても、犯行の破綻を暗示するラジオの伏線
が巧いです。
■「さらわれた幽霊」
二十年前、女優アン・ピーブルズは、息子のジミーを誘拐される。
身代金を用意し、受け渡し場所で待っていたにもかかわらず、犯人
は姿を現さず、ジミーもついにアンの元に帰ってくることはなかった。
そして現在、ジミーの行方を探ろうと怪しげな霊能者にまで頼るアンの元に
ジミーの霊から電話が掛かってきた。さらに、二十年前とまったく同じ文面
の脅迫状が送られてきて……。
オカルティックな装飾の内側に、陰鬱な家庭の悲劇が垣間見える本作。
手がかりとして機能させるために施された脅迫状のギミックが秀逸です。