身近にある"死"を思う。ひとが生活していくために欠かせない食事をつくるキッチンを通して死が交差する。
大切な人の死を乗り越えて、自分は食べ、生きていかなければいけない現実。
それはなんてシュールな世界。そして、目を逸らせない現実だ。
身近な死を経験した人ならきっと痛いくらいの涙が出るんじゃなかろうか。そう思った。
私はまだ、遠い人の死を経験したのみだから、まだ想像するしかないのだが、もし恋人が死んだら、私もまた、どのようにその寂しさを乗り越えていくのだろうと切実に思った。
現実はきっと吉本ばななさんの描くとおりに、そんなに悲惨なわけじゃない。
お腹もすくし、恋もする、お金のことだって、仕事のことだってなんとかしなければいけない。
そういうもどかしさや侘びしさの合間に、キッチンの無機質な光、包丁やまな板が鎮として並ぶすがた、朝の光につつまれた空間の静謐さ・・・なんかの描写が出て、やるせない死の世界に、とてもうまく共振している。
それはとても辛いことだけれど、同時にすごく救いなんだ、と思う。
そういうコントラストのうまく生かされた、作品。
そして、登場人物が異様に魅力的な、作品。