舞台は、海辺の小さな町。
海から昇る朝陽と沈む夕陽をおなじ場所で見ることができるところだ。
主人公のアーチーは、世界的に評価されるほどの芸術家でもある12歳の男の子。
キサとトアはアーチーの双子の妹。
日が出ている間しか起きていられないキサと、日が沈んでいる間しか起きていられないトア。
風を読む才能を持つ「風のエキスパート」という仕事をしているお父さん。
5年前に町に引っ越してきたこの家族を中心にした1年間のお話。
タイトルは「キサトア」だけど、キサもトアも物語の中心人物ではない。
彼女たちは自然の象徴としているのだと思う。
微妙なバランスの象徴。動と静、昼と夜。
風のエキスパートのお父さんは自然を相手に仕事をしている。
それは自然と戦うのではなく、逆らわず、あるがままに受け入れ、感じる。
だから自然は彼らに応えてくれる。
この世界は信じられないくらいの微妙で、繊細で、かつ絶妙なバランスの上に成り立っている。
大人の世界の汚い欲望や猜疑心に傷つけられそうになるけれど、彼らは悲しむことも怒ることもなく、ただ淡々と受け止める。
自然にあるがままに受け入れる。
「見えるものと見えないもの。それに囚われると自分の周りしか、今いる時間しか考えないようになってしまう。
自分の周りしか考えないと、つながりとバランスを壊してしまう。
今この瞬間にも、どこかでは花が咲き、どこかでは嵐が吹き荒れ、何かが眠り何かが目覚める。この世界には境界線などどこにもない。」
お父さんのセリフがこの物語のベースだ。
なるがままに。あるがままに。
だからこそ、強くしなやかに優しくいられる。
読み終わった後に切なくなるのは、ピュアで優しい世界にひたれたからだろう。
小路幸也の書く物語は大好きだ。