私は“超”の字がつく下戸だ。でも日本酒の「造り」の話は、「ものづくり日本」の伝統や真髄に連なるものとして非常に興味関心がある。
2009年に創業350年を迎えた菊正宗酒造が、自社商品プロモーションの意味も込めたユニークな本を出した。
酒造りの工程や、商品の総責任者と言える杜氏の言葉、日本酒に纏わる蘊蓄話などを、多くの写真とともに紹介している。あまりに有名なCMソングの裏話などにも興味深いものがある。
だが全体としては、雰囲気が良く酒肴が旨い店の探訪(と宣伝)とか酒蔵の紹介、とくに巻末30ページほどは一般愛飲家のエッセイが占めるなど、まさに“ファンブック”そのもの。
ヘタな例えだが、阪神ファンが巨人のファンブックになど見向きもしないように、よほど好奇心旺盛で興味を惹かれたということでもない限り、ビール党やウイスキー党その他“諸派”には読まれないだろう。他銘柄ファンの気を引いて、上手くすれば“乗り換え”させられる、くらいの役には立ちそうだが。
・・・まぁ、PR本なればこそ、そうした戦果が挙がれば十分役目を果たしたとなるのだろう。
ただ、『菊正宗』を明確に特徴づける生'(←酉偏に元、きもと)の仕込み工程を動画で紹介した付録DVDには注目。伝統ある「ものづくり」の現場や技術の息遣いを伝えており、非常に有意義だ。
しかも、オールカラーのこの装丁にDVDをつけてこの価格設定なのだから、ある意味良心的と言える。もっとも、商品PRになるなら儲けは度外視、なのかもしれないが。
なにしろ“キクマサ”ファンならば、値段で“悪酔い”する心配は全くないし、内容にも心地よく酔うことができるだろう。しかし、それ以外で一般大衆受けするかはやや疑問。単に日本酒の一般知識を得るだけならば他にもっと良書があるだろうから。
良いコンテンツも多いだけに、ちょっと残念。